初めまして
『乳がんの妻と歩幅を合わせて』へお越しいただきありがとうございます。
このブログでは、乳がんと診断された妻とのさまざまな時間から、気づいたことや感じたこと。今だからこそ言える話や日常を記録していこうと思います。
がんという病気に直面すると、不安や悲しみ、戸惑いが押し寄せてきます。でもその中でも、笑顔を忘れずに、希望を持って、ふたりで歩いてきました。そしてこれからも一緒に歩いていこうと思っています。
病気と向き合う日々の中で「夫にできることってなんだろう?」と何度も自問しました。
完璧な答えはありませんが、「歩幅を合わせて、隣にいること」が、いまの僕なりの思いです。
妻が乳がんと診断された日から随分時間が経ってしまいましたが、同じような状況にいるご夫婦や、ご家族の誰かの心が、ほんの少しでも軽くなったり、あたたかくなったりするきっかけになれたらいいな。
そんな想いから、このブログを始めようと思いました。
過去の経験そして現在の状況などお話できればと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
左胸のしこり
2011年1月19日に妻が乳がんの告知を受けました。
実は、妻が独身だった頃から左の胸には良性のしこりがあり定期的に検査を受けていました。痛みやサイズが大きくなるなどの変化もなく特に問題なく経過していたようです。
結婚を機に、勤めていた職場を退職し、私の勤務先がある土地で新たな生活を始めました。見知らぬ環境の中での暮らしは不安もあったと思いますが、やがて3人の子どもに恵まれ、毎日が慌ただしくも幸せで充実していました。
けれども、育児や家事、そして仕事に追われる日々の中で、妻の体のことは後回しになってしまい、と言うよりは妻の左胸には良性のしこりがあるということを忘れていました。そして気づけば約4年間、左胸の定期検査を受けることがありませんでした。
では、あの時期に検査を受けていれば、何かが変わっていたのでしょうか――。
今となっては、その答えを知る術はありません。
私は、妻の左胸に良性のしこりがあることを知っていました。
だからこそ、その事実を忘れず、きちんと定期検査を薦めていれば、もっと早い段階で何かに気づけたかもしれません。
そう思うたびに、胸の奥に小さな悔しさと後悔が残ります。
病院受診
2010年、私は長年勤めていた会社を辞め、新しい職場へと転職しました。もちろん、私にとっても妻にとっても初めての土地です。
この環境の変化は、私たちにとって一つの試練となりました。生活のリズムが変われば、心の余裕や役割分担にも影響が出ます。それまで当たり前のように交わしていた会話や、自然にできていた気遣いが、少しずつ減っていったのかもしれません。
気づかぬうちに、私たちの間には小さなすれ違いが積み重なっていたのでしょう。楽しいことも、辛いことも、何でも話してくれていた妻にとって、この時期はきっと、孤独を感じる辛い日々だったのかもしれません。
そんな時、妻の独身時代からの親友から連絡がありました。
話の内容は、妻の左胸にあるしこりのことでした。
親友は以前からそれを気にかけてくれていて、一度病院で診てもらうよう勧めてくれたのです。
本来なら私が言うべきことだったのに、私は子供や自分の仕事ことばかりで頭がいっぱいになっていました。
本当にその親友に感謝です。私たち夫婦を救ってくれたのです。
そして2011年1月19日 妻は病院を受診しました。
乳がん告知と私の決意
病院受診の朝も、いつもと変わらない時間が流れていました。朝食を済ませ、子どもたを保育園に送ってから私はそのまま職場へ向かいました。
この時の私は、採血とエコーで確認して「特に問題ありません」と告げられるだろうと、疑いもなく思っていました。
良性のしこりが悪性に変わることはないだろう。それに、ここ数年、妻から左胸についての話や相談もなかったので、4~5年前と変わっていないと信じていたのです。
しかし後になって、妻は左胸に違和感を覚えていたと知りました。
そんなこととは露知らず、「大丈夫よ、検査頑張ってね。車の運転も気をつけて」とだけ伝え、妻は一人で病院へ向かうことになったのです。
今思うと、この「大丈夫」という言葉——。
少しでも安心できればという思いで口にしたはずが、結果的には妻の不安を打ち消す言葉になっていたのかもしれません。
あのときの「大丈夫よ」という一言は、気づかぬうちに妻を精神的にもひとりにしてしまっていたのかもしれないとそう感じています。
その日の勤務中はやはりどことなく妻の受診のことが気になっていました。普段は机の上に置いておく携帯電話ですが、いつ連絡がきてもいいようにポケットに入れ仕事をしていました。
時間を気にしながら連絡を待っていましたが、午前中には音沙汰がありません。
午後になってもしばらく待ち続けましたが、なかなか連絡が来ません。
心配が募り、確か15時頃だったと思います。思い切って私から電話をかけました。
電話に出た妻は、まだ受診先の病院にいました。そして、検査結果を私に告げました。
「うん。がんだって。乳がん」
電話越しなので妻の表情は見えません。
私を心配させまいと、明るく笑いながら伝えてくれたのですが、声は震えていました。
その震えから、不安や恐怖が彼女を包み込んでいることが、痛いほど伝わってきました。
私はこの時、頭が真っ白になり、何を話したのか正直覚えていません。
ただ、胸の奥に押し寄せてくる罪悪感だけは、今も鮮明に覚えています。
その日、妻はひとりで病院に行きました。
結果を聞く瞬間、妻はどんな気持ちで診察室のドアを開けたのか。
そのとき隣に座っていれば、どれほど妻の支えになれたのか。
乳がんという告知を、ひとりで受けさせてしまった——
その事実は、今も胸の奥で重くのしかかっています。
なぜ一人で行かせてしまったのか。
どうして一緒に行かなかったのか。
この日、私は心に誓いました。
これから妻が病院を受診するときは、必ずそばにいようと。

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